大学時代に少年軟式野球の世界大会で通訳のバイトを2年連続でしたことがある。佐川急便とナガセ(軟球のメーカー)がスポンサーになって、東京近辺に何十か国ものチームを集めて、「軟式」野球の大会を開いていた。今でもやっているかは知らない。
私は1年目はフィンランド、2年目はベルギーのチームに帯同した。勿論、私にフィンランド語やオランダ語が出来るわけではなく、英語で通訳した。選手の子供達はアメリカンスクールに通っている子達が多かったし、コーチや監督がアメリカ人だったりしたので、それでも何とか用は足りた。
世界大会と言っても、別に各国で予選をやっていたわけでも、代表選手を選抜していたわけでもなく、殆どはその国の何処かの町で日本行きを希望する子達を集めてチームを作っていたようだった。私が担当した両チームも恐ろしくヘタクソだった。日本の少年野球チームと練習試合をするといつもコールド負けだった。大会の決勝もたしか日本対韓国か台湾だったと記憶している。
それでもアメリカが主導している硬球のリトルリーグではなく、日本発祥の軟式野球を普及させようという試みは素晴らしかったと思う。今現在、硬式野球と軟式野球のどちらが世界の主流かと問えば、もちろん硬式野球だ。軟式野球は多分、日本でしかやっていない。上の大会でも、大抵のチームは普段硬球で野球をしていて、日本で初めて軟球を触ったという子達が多かった。日本のプロ野球とメジャーリーグのボールの違いどころではない。
そうした現状を度外視して両者を比較すれば、私は軟式野球の方が優れたスポーツだと思う。まず第一に安全だ。デッドボールを食らっても痛くない。守備練習も恐くない。ヘルメットや金的カップもいらないので費用が安い。バットが折れることもない。フィールドの外にボールが飛び出しても大事には至らないから、頑丈で高いフェンスも不要だ。
野球自体がサッカーに比べて普及度が低いのは、そのあたりのハードルが高いことも一因ではないだろうか。アメリカ育ちの息子は小さい頃からヘルメットだの金的カップなどを身に着けて、専用の野球場だけでしか野球をやったことがない。たかが子供の遊びなのに仰々しいし、おカネもかかる。これでは世界に野球を普及させようとするのは無理がある。
プロ野球やメジャーリーグが軟球でやれば、それを目指して競技人口は飛躍的に伸びるだろう。日本の「カイゼン」を世界に広めることが出来たら素晴らしい。東京オリンピックで野球を復活させるのなら(個人的には反対だが、その辺は別の機会で述べたい)、いっそのこと軟球を使用してはどうだろうか。